個人開発で15人にテストしてもらったら、看板機能が「こじつけ」だった
この記事は、相互送客プラットフォーム「NEXT+」の運営者が、実際の運用データと実体験に基づいて書いています。

クラウドワークスで15人に依頼して、6,000円払いました。返ってきたのは、自分のサービスの看板機能を「こじつけに感じました」と書いた一通のフィードバックでした。
この記事は、個人開発のサービス(NEXT+)を実際に他人のサイトへ設置してもらい、そこで受けた指摘をどう処理したかの全記録です。直した4つと、あえて直さなかった3つを、実際の指摘文とともに書きます。
「ユーザーテストのやり方」を解説した記事は山ほどありますが、そのほとんどが方法論です。実際に何を言われて、いくらかかって、どこを直さなかったかまで書いたものが見つからなかったので、自分で書くことにしました。
結論を先に
| 依頼先 | クラウドワークス |
| 人数 | 15人ほど |
| 単価 | 1件 300〜1,000円 |
| 総額 | 約6,000円 |
| 条件 | 自分の本番サイトにバナーを設置したうえで回答 |
| 得たもの | 参加サイト15件(現在の参加事業者21件の大半) |
| 直した指摘 | 4つ |
| 直さなかった指摘 | 3つ |
一番大きかったのは機能の追加ではなく、看板機能の設計を作り直したことでした。
なぜ「本番サイトへの設置」を条件にしたか
普通のユーザーテストなら、画面を見せて感想を聞けば済みます。その方が安いし速い。それでも本番設置を条件にしたのは、狙いが2つあったからです。
1つ目は、詰まる場所を正確に出すため。
画面を眺めた感想は「分かりやすそう」で終わります。でも自分のサイトのHTMLに実際にコードを貼る作業まで通してもらうと、どこで手が止まったかが具体的に返ってきます。実際、返ってきた指摘は「ここが分かりにくい」ではなく「バナーの発行場所を探すのに一番時間がかかった」「サービス説明と気持ち検索の情報の書き分けが分からず手が止まった」という、工程単位のものでした。
2つ目は、そのまま参加者になってもらうため。
NEXT+はサイト・アプリの運営者に参加してもらうサービスです。テストで触ってもらった人が気に入ってバナーを置き続けてくれれば、テスト費用がそのまま参加者獲得費用になります。
結果としてこれは効きました。現在の参加事業者21件のうち、サイト・アプリが15件。ほぼこのテストから来ています。1件あたり400円で初期の参加者が揃った計算です。
前回(第3話)で、X広告に7,500円使ってリンククリック0だった話を書きました。同じ金額を「1人に触ってもらう」ことに使ったら15件。お金の使いどころが逆だったという結論は、その後さらに補強された形です。
何を聞いたか
アンケートは5問だけにしました。
- 登録からバナー設置まで、迷った・つまずいた箇所はどこですか
- 「気持ち検索」を試して、結果はあなたの気分に合っていましたか(A. 合っていた / B. まあまあ / C. ずれていた)
- トップページを読んで、何ができるサービスか登録前に理解できましたか
- バナーをこのまま置き続けたいと思いますか
- 「これがあったら使い続けるのに」と思う機能・改善点
意識したのは、Q2とQ4に選択肢を置いたことです。自由記述だけだと「良いと思います」で終わりがちですが、「C. ずれていた」を選ばせる形にしておくと、そこに理由を書いてもらえます。
そして実際、その「C」が一番重い指摘になりました。
一番効いた指摘:看板機能を「こじつけ」と言われた
NEXT+には「気持ち検索」という機能があります。お客様が「肩こりがつらい」のような一言を入力すると、AIがその気持ちを6つの視点で分析して、合うお店を3件紹介する——これが看板機能です。
Web集客歴10年という方が、Q2にこう書いてきました。
C. ずれていた
入力した一言:「ぐっすり眠りたい」
分析結果が、入力した言葉の言い換えに見えました。(欲求:ぐっすり眠りたい/気持ち:眠りたい/なりたい状態:熟睡したい) 6つの視点で分析とありますが、自分が入れた以上の情報が出てきませんでした。
ここで手が止まりました。続きがもっときつい。
紹介されたのはカフェ・ニュースアプリ・献立作成サービスの3件で、睡眠とは結びつきませんでした。 理由も「落ち着いたカフェでリフレッシュでき眠りへの準備が整いそう」「通勤中に情報収集を楽にでき心を落ち着けて眠りにつけます」など、こじつけに感じました。
無理に3件出すよりも「今は合うお店がありません」と表示したほうが、サービスへの信頼は保たれると思いました。
これは「バグがあります」ではありません。この機能の価値そのものが無い、という指摘です。
精度の問題ではなく、設計の問題だった
最初に考えたのは「AIの精度が足りない」でした。でも指摘文をもう一度読んで、違うと気づきました。
3件出すことが仕様になっていたのが原因です。
AIに「最大3件選べ」と指示すれば、AIは3件選びます。候補が「ぐっすり眠りたい」に1件も合っていなくても、カフェを「リフレッシュできるから眠りにつける」と理屈をつけて枠を埋める。精度の問題ではなく、枠を埋めさせた設計の問題でした。
さらに言えば、参加店がまだ21件しかありません。「ぐっすり眠りたい」に本当に合う店が存在しない可能性の方が高い。存在しないものを無理に出させていたわけです。
直し方はプロンプトの書き換えでした。
枠を埋めるために無理に選んではいけない。(例:「ぐっすり眠りたい」に対してカフェやニュースアプリを「リフレッシュできるから眠りにつける」と結びつけるのはこじつけであり、してはならない)。1件も合わなければ picks を空配列にする。
指摘文にあった例を、そのままAIへの禁止例として埋め込みました。
3枠埋めるのをやめる判断に、迷いはありませんでした。 検索して「0件です」と出るのは、サービスとしては怖い。何も出ないと使われなくなるかもしれない。それでも、機能に対する信頼感の方が大事だと考えました。1回でも「こじつけ」を返した時点で、その人はもう気持ち検索を使いません。0件を返すサービスは「今回は合わなかった」で済みますが、こじつけを返すサービスは「このAIは適当だ」で終わります。
精度は上げられます。参加店が増えれば、そもそも0件になる場面も減ります。でも一度失った信頼は戻らない。 だから先に、嘘をつかない設計にしました。
もう1人の指摘:作った本人には見えていなかった4つ
別の方(はざめさん)からも、詰まった箇所が具体的に返ってきました。指摘は全部で7つほどありましたが、共通していたのは**「作った本人には見えない」タイプのもの**だったことです。
1. バナーの発行場所が見つからない
埋め込みタグが「QRコード管理」の中の、発行済みQRカード内にある「サイト・アプリに埋め込む」というリンクの先にあり、サイト運営者側からは見つけにくかったです。
NEXT+は実店舗向けのQRから始まったサービスで、サイト向けのバナーは後から足しました。作った順番が、そのまま画面の構造に残っていたわけです。サイドメニューに「バナー」を独立させました。
2. 実店舗前提の言葉づかい
「お客様」「来店」「自店」「レジ前」といった実店舗前提の語彙で書かれているため、Webサイト運営者として読むと「これは自分向けの画面なのか」と一瞬止まります。
これも同じ根っこです。事業者の種別で語彙を切り替えるようにしました。
3. 入力欄が何に使われるか分からない
この文章が気持ち検索のマッチングに使われると後からFAQで分かったのですが、入力時点では「サイト紹介文」なのか「AIに読ませる情報」なのか判断がつかず、書く粒度に迷いました。
そしてこれは、もう1人からも別の言い方で来ました。
サービス説明と「気持ち検索の情報」の書き分けが分からず手が止まりました。求められている内容が似ているように見えました。
2人が同じ場所で止まっているので、これは確実に設計の問題です。「公開される紹介文」と「公開されない検索用キーワード」という役割の違いを両方の欄に明記し、さらに**「内容が重なっても構いません」**と書き足しました。実際に手を止めていたのは、たぶんここです。書き分けなければいけないと思わせていたこと自体が間違いでした。
4. 文字が小さくて、関係ない説明を読み飛ばさないといけない
バナー管理画面の説明が細かく、文字も小さいため読むのが大変でした。サイト運営者向けとアプリ運営者向けの手順が同じ場所にあるので、自分に関係ない説明を読み飛ばす必要がありました。
この画面は、親切のつもりで全パターンの手順を並べていました。結果として全員が、自分に関係ない説明の中から自分の分を探す画面になっていた。設置方法を先に選ばせて、選んだ1つ分だけを出すようにし、11pxだった本文を12px以上に上げました。
もう1つ、成果指標の要望も来ました。
どんなジャンルのサイト・アプリから流入があったのかが数字で見えると、置き続ける判断がしやすくなります。送客数の合計だけでなく、流入元の内訳が知りたいです。
これは継続率に直結するので、分析画面に「どこから紹介されたか」を業種別で追加しました。ただし店名ではなくジャンルで出しています。参加店が少ない時期に店名を出すと、相手の実績が推測できてしまうからです。
直さなかったもの
全部直したわけではありません。ここが一番迷いました。
1. 必須項目が多い
必須項目が多く感じました(気持ち検索5項目+業種+URL2つ+表示エリア+サービス画像)。
直しません。 これが最低限です。気持ち検索の5項目はマッチングの材料そのもので、減らせばそのまま紹介精度が落ちます。増やす予定も減らす予定もなく、いまがちょうどいい量だと考えています。
2. サービス画像が必須(16:9・1200×675px以上)
画像を持っていない方はここで止まると思います。でも必要だというのも理解できます。
直しません。 これはブランドの統一性のためです。紹介枠に並んだときに、画像がある店とない店が混ざると、枠全体が安っぽく見えます。1件の登録しやすさより、全参加者に返る見た目の質を取りました。指摘した本人も「必要だというのも理解できる」と書いてくれています。
3. 「約5分」という入口の案内
「バナーを1つ貼るだけ」「約5分」という入口の案内と、実際の入力負荷に差があると感じます。
これは指摘が正しいので直しました。ただし直し方は「入力を減らす」ではなく、「約5分」を「約20分」に書き換える方です。
登録ボタンに「約20分」と書くのは、普通に考えれば逆効果です。それでもこちらを選んだのは、期待値とのズレこそが一番の離脱理由だからです。5分だと思って始めた人が20分かかったら、途中で閉じるか、閉じなくても不信感が残ります。20分だと分かって始めた人は、20分かけてくれます。
数字を小さく見せて集めた登録は、その後の設置まで進みません。
なぜ自分で気づけなかったのか
指摘を読み返すと、そのほとんどが言われてみれば分かるものです。「書き分けが分からない」「特典を設定する意味が分からない」「文字が小さい」——初見なら誰でも詰まる場所です。
作った本人が気づけなかった理由は、はっきりしています。
自分が分かるから、ユーザーも同じように分かると過信していました。
これに尽きます。仕様を決めたのは自分で、画面を作ったのも自分なので、「サービス説明」と「気持ち検索の情報」が別物なのは自明でした。バナーの発行場所も、自分は毎日通っているので迷いようがない。自分の頭の中にある地図を、画面が表示していると錯覚していたわけです。
これは反省すべきところだと思っています。そして、この錯覚は自分では絶対に破れません。 何度読み返しても、自分には読めてしまうからです。他人に触ってもらう以外に方法がない。
6,000円で何が手に入ったか
改めて整理すると、こうなります。
| 得たもの | 内容 |
|---|---|
| 参加サイト | 15件(現在の参加事業者21件の大半) |
| 直した箇所 | 看板機能の設計 + UI改善4件 |
| 直さない判断 | 3件(理由を言語化できた) |
| 気づき | 自分には自分の画面が読めない |
金額は6,000円です。同じ金額を広告に使う選択肢もありました。第3話に書いたとおり、X広告には7,500円使ってリンククリック0でした。
広告は「知らせる」ことにしか使えませんが、テスト依頼は「直す材料」と「参加者」が同時に手に入ります。 立ち上げ期にどちらを買うべきかと言えば、迷う理由がありません。
とくに、看板機能の設計ミスを参加者が増える前に見つけられたのが大きい。参加店が100件になってから「こじつけを返すAI」だと知られていたら、直しても評判は戻りませんでした。
これからやる人へ
同じことをやろうとしている個人開発者に、一つだけ言うとしたら。
「感想」ではなく「作業」を依頼してください。
「使ってみて感想をください」だと、返ってくるのは感想です。「自分のサイトに設置したうえで、詰まった箇所を教えてください」だと、返ってくるのは工程のどこで止まったかです。単価300円でも、後者なら十分に返ってきます。
そしてもう一つ。選択肢つきの質問を1問だけ混ぜてください。 「A. 合っていた / B. まあまあ / C. ずれていた」のような形です。自由記述だけの回答は褒めてくれますが、Cを選んだ人は理由を書いてくれます。今回、サービスの根幹を作り直すきっかけになったのは、そのCの1件だけでした。
おわりに
NEXT+は、バナーを1つ貼るだけで他の参加サイトから紹介される相互送客のサービスです。発信力がなくても集客できる仕組みを目指して作りました(なぜ作ったかは第2話に書いています)。
この記事に書いたとおり、まだ参加者21件の小さなネットワークです。テストで触ってくれた方々が「参加事業者が少ない段階では送客が成立しにくい」と正直に書いてくれたのも、そのとおりだと思っています。
でも、だからこそいま参加した方ほど紹介される機会は多くなります。そして関わる人が増えるほど、全員の送客が増える設計です。同じように集客で悩んでいる個人開発者の方に、選択肢のひとつとして知ってもらえたら嬉しいです。
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連載「NEXT+開発記」
- 第1話: 相互送客とは?仕組みと、3ヶ月で消える理由
- 第2話: 個人開発のマーケティングに詰んだので、宣伝しない集客の仕組みを自分で作った
- 第3話: 個人開発のサービスを9か所で宣伝したら、7か所が完全にゼロだった
- 第4話: 15人にテストしてもらったら、看板機能が「こじつけ」だった(この記事)