個人開発のマーケティングに詰んだので、宣伝しない集客の仕組みを自分で作った
この記事は、相互送客プラットフォーム「NEXT+」の運営者が、実際の運用データと実体験に基づいて書いています。

個人開発のプロダクトは、作るより広める方が難しい——これは作った人だけが知る事実です。
私はチームで個人開発をしていて、いくつものWebアプリを作ってきました。その中の1つ、ユーザーが決めた目標に関連するニュースが届くWebアプリ「newsclaw」をリリースしたとき、この壁に正面からぶつかりました。資金はない。フォロワーもいない。それでもユーザーは集めなければならない。
この記事は、そこで数日唸った私が「宣伝する」のをやめて、宣伝しない集客の仕組み(NEXT+)を自分で作ってしまった話です。同じように個人開発のマーケティングで詰んでいる人に向けて、失敗の構造と、いま実際に動いている代替案を書きます。
個人開発のマーケティングが難しい本当の理由
「個人開発 マーケティング」で検索すると、答えはだいたい同じ場所に着地します。
- SNS(X・TikTok)で開発過程を発信する
- QiitaやZennに技術記事を書く
- プレスリリースを送る
- 広告を出す
どれも間違いではありません。実際に成功例もあります。ただ、これらには書かれていない前提があります。
| 定番の方法 | 隠れた前提 |
|---|---|
| SNSで発信 | フォロワー、または伸びるまで数ヶ月続ける継続力 |
| 技術記事を書く | 記事が読まれる実績・文章力。読者は開発者で、ユーザー層と違うことも多い |
| プレスリリース | メディアが取り上げたくなるニュース性(と数万円) |
| 広告 | 予算。回収の見込みが立つまで燃え続ける |
つまり定番の答えは、発信力か資金がある人の答えなのです。両方ない状態——個人開発者の大半のスタート地点——に対する答えは、探してもほとんど見つかりませんでした。
私の場合: TikTokを選んで、止まった

newsclawの宣伝をどうするか、いろいろ検討した結果、私はTikTok動画での集客を選びました。最初は自分で運用してみて、すぐに気づきました。これは経験者に任せた方がいいと。
そこでTikTokerの募集を始めたのですが——適任者がまだ見つからず、集客のスタートは切れていません。悪い判断をしたとは思っていません。ただ、「発信で集客する」ルートは、自分でやれば時間を、任せれば人探しを要求してくる。どちらに転んでも、プロダクト開発と同じくらい重い"もう1つのプロジェクト"になる。これが実際にやって分かったことです。
その足踏みの時期に、ネクプラ(NEXT+)のアイデアが降りてきました。
「宣伝する」以外の集客——すでにお客さんがいる場所から分けてもらう
発信で集客できないなら、どうするか。視点を変えると、答えは昔からありました。
私がいつも行くカフェのマスターも、集客に悩んでいました。実店舗の世界には「近所の美容院とショップカードを置き合う」という文化が昔からあります。自分で発信する代わりに、すでにお客さんがいる場所から紹介してもらう——相互送客と呼ばれる方法です(詳しくは第1話: 相互送客とはに書きました)。
これをWebに翻訳するとこうなります。
あなたのサイトに足りないのは発信力ではなく、「すでに読者がいる他のサイトからの紹介」である。
相互リンクや広告枠の交換と違うのは、送客が記録され、送った分だけ返ってくることが仕組みで保証される点です。口約束の紹介が続かない理由は第1話で書いたとおり「記録がない・互恵が保証されない・手間がかかる」の3つで、そこを仕組みに置き換えます。

なぜ実店舗ではなく、サイト・アプリから始めたのか
アイデアの出発点は「QRコード×カフェ」だったので、NEXT+は実店舗向けのサービスとして構想が始まりました。でも設計の初日に、対象にサイト・アプリを加えました。理由は2つあります。
1つ目。集客に困っていたのは、私自身がオンラインの運営者だったから。 実店舗が集客に困っているのは知っていました。でも私もnewsclawの集客に困っていた。つまり、私みたいにWebサービスやアプリの集客に困っている人が大勢いるはずだ、と気づいたのです。自分が最初のユーザー像なら、そこから始めるのが一番確実です。
2つ目。実店舗の開拓は、人力と資金がかなり必要だから。 店を1軒ずつ回って説明して、POPを置いてもらう——これを資金ゼロの個人開発チームがやるのは現実的ではありません。オンラインなら、コンセプトに共感してもらえればバナー1つで当日から参加できます。資金面でも効率面でも、オンラインから始める方が理に適っていました。
さらに言えば、この2つは繋がっています。たとえ1日10PVのサイトでも、バナーを貼れば送客が生まれます。実店舗が独力では作れない紹介の流れが、先にオンラインで回り始める。その画面にはNEXT+自身の案内も載っているので、いつか実店舗の経営者の目にも留まる。オンラインが先に育ち、実店舗を後から迎えに行く——そういう順番の設計です。
実際の登録データもその通りになった
2026年8月時点のNEXT+の登録事業者は19。内訳を見ると——
- サイト・アプリ(オンライン): 13
- 実店舗: 1
- 訪問型: 1 (残りは店舗未登録の事業者)
実店舗へはまだこちらから営業をかけてすらいないので当然の偏りではあるのですが、狙った順番の通りに、まずサイト・アプリ運営者のネットワークとして育ち始めています。そして印象的だったのは登録までの速さです。コンセプトに共感してくれたサイト・アプリの運営者は、その日のうちに登録して、その日のうちにバナーを貼ってくれます。 実店舗の営業では考えられないスピードです。
バナー1つがQRコード1枚と同じ仕組みで動く
技術的な話を1つだけ。NEXT+の設計で一番効いたのは、「QRコードは実体としてはただのURLである」という見方でした。
紙に印刷すればQRコード、サイトに貼ればバナー、アプリに入れればボタン。「スキャンする」を「クリックする」と読み替えるだけで、来店の記録も、紹介の順番決めも、ポイントの計算も、実店舗向けに作った仕組みがそのまま動きました。実店舗とオンラインを別々のサービスにせず、1つの送客ネットワークにできたのはこの見方のおかげです。
だからサイト運営者の参加は本当にバナー1つで終わります。HTMLを1回貼るだけ。更新も運用もありません。「もう1つのプロジェクト」にならないことは、TikTokで足踏みした自分への答えでもありました。
個人開発の宣伝に悩んでいる人へ
まとめます。
- 個人開発のマーケティングの定番(SNS・技術記事・プレスリリース・広告)には、発信力か資金という隠れた前提がある
- 両方ない場合の選択肢が「相互送客」。自分で発信する代わりに、すでにお客さんがいる場所から紹介してもらう。実店舗では昔からある方法で、それをサイト・アプリに開いた
- 私はそれを仕組みにしたNEXT+を作り、実際にサイト・アプリ運営者13組のネットワークとして回り始めている
もし「newsclawで唸っていた当時の自分が、いまのNEXT+に出会ったら使うか?」と聞かれたら、即答で使います。コストと労力がほぼかからないからです。 登録は無料で、やることはバナーを1つ貼るだけ。発信を続ける必要も、TikTokerを探す必要もありません。
ネットワークはまだ小さいです。だからこそ、いま参加するサイトほど紹介される機会は多くなります。同じ悩みの中にいる個人開発者にこそ、先に見つけてほしい仕組みです。
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